平成11年度 三崎町連合中学校水産教室報告

 私たち平成11年度1年生は、平成11年10月22日に三崎町の3つの中学校が連合で、三崎町の漁業関係施設を見学する「水産教室」に参加しました。以下に紹介するのは、水産教室の概略と、事後の報告会の報告原稿を一部手直ししたものです。
水産教室の目標
 町内の中学生が仲良く助け合い学び合いながら、地域産業を理解
(漁業後継者の育成)するとともに、規律正しい団体行動を身につける。

日程
 @ 開講行事(13:30〜13:50)  A 見学・漁協の方のお話(14:00〜16:00)  B 閉講行事(16:15〜16:30)
見学場所
 @ 佐田岬漁港から漁船に乗って佐田岬灯台の横にある蓄養池を見学
 A 水産加工場でタチウオやウニの加工の様子などを見学       
 B 種苗センターでアワビの養殖の様子を見学              

参加生徒(三崎町連合中学校1年生27名)
○ 二名津中学校 男8+女3 計11名  ○ 三崎中学校 男4+女5 計9名  ○ 串中学校 男4+女3 計7名
引率者教員・・・・・各校校長 学級担任 養護教諭(各3名 計9名)
結果報告(生徒が劇風に発表した発表原稿)

<学級委員>
 これから、一年生の水産教室学習発表会を始めたいと思います。
 僕たちは、学習したことを、途中のエピソードなども含めながら、楽しい話にしています。ただし、説明は、漁協の人に伺ったり、自分たちで調べた正確な知識です。
<ナレーター>
 今日は、水産教室。天気が良くて、最高の午後になりそうです。開講式が始まり、三崎中学校の校長先生があいさつをしています。

<校長先生> 今日は、連合中学校の水産教室ということで・・・・・。
<ナレーター>おや、何か問題が始まったようです。
<先生>こら、何してるの!
<男子1>
 えっ、僕、報道委員の仕事が。報道新聞の作成のための写真をとるように言われているんです。とらなくちゃいけないんです。
<先生1>
 何言っているの。そんなこと聞いてません。列に戻って話を聞きなさ〜い。
<ナレーター>
 事前に了解を取っていなかった彼は、担任の先生に注意されてしぶしぶ列にもどりました。それにしても、先生は怖いですねえ。あっ漁協の人の説明です。

<漁協の人>
 今日は、楽しく学びましょう。さて、漁協ではいくつかの仕事をしています。まずこれから、みんなが学習する、養殖の仕事や魚の調整出荷それに魚の加工。これらは、後で説明を受けて下さい。他に、漁師さんの釣った魚の出荷や船の管理もあります。船を修理するのも、漁協の仕事の一つです。他に、船を購入するときのお金の工面を手助けすることもあります。密猟もあるので、パトロールもしますよ。さて、三崎町でとれる魚を説明します。大幅紙を見て下さい。一年中捕れる魚は、カサゴ、メバル、イサギ、鯛、アジ、ハマチ、タチウオ、サバなどです。春から夏に取れる物は、カレイ、オコゼ、ナマコ、ウニ、あわび、サザエです。秋から冬にかけてがフグ、カニ、伊勢エビなどですよ。他に、トコロテンなどの材料になる天草なども取ります。三崎町では他のところと違って、男のアマさんが多く、サザエやあわびをとります。天草やヒジキは女性が集めることが多いですよ。何か、質問はありませんか。

<男子2> はい、ハマチは出世魚だと聞きますが、どんなふうに名前が変わるのですか。
<漁協の人>
 そうですね、この辺りでは4s以上をブリ。3s台をハマチ。2s台をハイカラ。それ以下をヤズと言っていますよ。

<男子2>よくわかりました。
<ナレーター> さぁ、船に乗り込むようですよ。おや、女の子たちが何か話しています。
<女子1> 私、ぜーったい酔う。
<女子2> 私は、酔ったことなんてない。
<女子1> 車でも酔うのに。絶対酔う。
<先生2> そう思っているとやっぱり酔っちゃうよ。気にしない、気にしない。
<ナレーター>
 そう言って生徒に安心させようとしている石川先生の手にはなぜか汚物入れがしっかり握られています。何かいやな思い出でもあるのでしょうか。さぁ、船が出ました。

<先生1> 爽快。何だ大丈夫ですよ。
<先生2> 湾の内だけよ、これからが……。あれ、気持ちいい。
<先生1> 今日は風もないし、大丈夫みたいですね。よし、三人で写真!さっ並んで。
<ナレーター> 心配することもなく、いいクルージングのようですね。
<男子3> あれ、トビウオだ。
<ナレーター>
 トビウオも歓迎してくれたようです。あっ灯台が見えて来ました。その下が蓄養池のようです。蓄養池ではえさをまいている女性がいるようですね。

<男子4> おばさん、えさは何ですか。
<漁協の人> 太刀魚の頭や骨ですよ。加工場で生ゴミとしてでたものを使います。こうするとゴミも減らせるし、餌代もかかりませんよ。また、小さなアジを凍らせておいて餌にすることもあります。
<男子4> 何がいるんですか。
<漁協の人> 三崎町で養殖されている魚は、鯛、ハマチ、アワビ、伊勢エビ、サザエなどですが、蓄養池では、いろいろ含めると四十種類ぐらいいますが主に、伊勢エビ、サザエ、ヒラメを飼っています。
<男子4> えっどこにいるんだ。
<校長先生> ほら、石のすきまに固まっているよ。暗いところが好きなんだよ。
<男子4> あっ、校長先生!でも、ヒラメはいませんよ。
<校長先生> ほら、そこに岩のようにへばりついているのが、そうだよ。
<男子4>
 じゃあ、あそこにある、コンテナいっぱいの伊勢エビの死骸は、何かなぁ。病気で死んじゃったんですか。
<漁協の人> いや、あれは、脱皮した後の殻ですよ。
<男子4> ふーん、伊勢エビって脱皮するんですね。おばさん、蓄養池の役目を教えてください。
<漁協の人>
 蓄養池の仕事は、とったサザエや伊勢エビをためておいて、少しずつ売ることです。なぜ、一度に売らないかというと、一度に大量に売ると値崩れして安くなってしまうからです。伊勢エビは、ここで大きく育てて、正月に売るととても高く売れます。一番多い時期には十五トンほどになります。金額にして一億二千万円程になります。また、ヒラメなどは放流することもあります。漁で取れるものは、もともとここで育ったり子供だったりするものが多いんですよ。ヒラメの稚魚は県から委託されて育てています。

<男子4> こんなに高い魚やエビがいたら、泥棒にあいませんか。
<漁協の人>
 ここは、ちょっと海が荒れると船が着けられなくなるところです。だから、密猟者は来たことがありません。でも、漁港ではときどきあります。それで、漁協の人は協力してパトロールをしています。

<男子4> お仕事、大変なんですね。ありがとうございました。
<ナレーター> さぁ、漁港に帰ります、全員船に乗り込みました。
<男子5> うわっすごい水しぶき。わーい。
<男子1> おっシャッターチャンス。
<先生1> あっイルカ。
<女子3> なにー。えっ、どこどこ。
<先生1> ほら、あそこ。黒いイルカ。うわっジャンプした。
<女子3> あっ見えた。ねぇ、男子ー。イルカがいるよ。
<男子5> えっホント。わっ三頭もいる。イルカがいるか。なーんてね。
<ナレーター>
 まるで、私たちに、イルカがさよならしてくれたようでした。残念ながら、見ることができなかった人もいましたが。さあ、次は加工場です。

<男子5> ね、西岡先生、後でジャコ天もらえるんだよね。去年そうだったって
<先生1>
 そう、私も楽しみにしてたんだけど、残念ながら、今年はないんだって。うまく、連絡が伝わってなかったんだって。
<男子5> なーんだ。
<先生1> 私も、なーんだ、ざんねーん。だよ。
<ナレーター> さて、加工場につきました。何やら妙な臭いが漂ってきます。
<男子6> うわっ臭い。たまらーん。
<男子7> 入りたくなーい。もういやだぁ。何だよー。
<男子6> あれ、これ何だよ。何で玄関の所にこんな水たまりがあるんだよ。
<男子7> 靴がぬれちゃうよ、とびこそうよ。
<漁協の人>
 あっ、待って!これは加工場にばい菌を持ち込ませないための消毒液なの。靴の裏についた汚れを、ここで落とすようにしているんですよ。だから、ちゃんと踏んでくださいね。

<男子6> あっそうなんだ。食べ物を作るところだから気をつかっているんだね
<男子7> うわー、あのおばちゃん、魚をさばくのはやーい。太刀魚をさばくのに十五秒きっかりだよ。なれてるなぁ。
<漁協の人>
 みんなの口にいれるため、毎日、何時間もしていますからね。蓄養池でも聞いたと思いますが、さばいた後の骨や頭は、蓄養池の魚の餌にしたり、からっと揚げて骨せんべいにして販売したりします。そのままだと、単なる生ゴミで処分に困りますが、工夫すればこれらも大変な資源なんですよ。

<男子6> このさばいた太刀魚の身はどうするんですか。
<漁協の人>
 小さすぎて焼き魚には向かないでしょう。だから、真空パックにして東京に飛行機で出荷します。空輸というんですよ。回転ずしの寿司ネタになります。また、真空パックにしないものはすりつぶしたり蒸したりして、ジャコ天になります。

<男子7> なるほど。加工場は臭くていやだと思っていたけど、こんな中でも一生懸命、仕事をしてくれる人がいるから、僕たちはいろいろな物をたべられるんだな。
<男子6> 食事のときは、感謝して食べるべきだなぁ。
<男子7>
 あれ、このポスターは何だろう。関サバって聞いたことがあるぞ。ね、おじさん、これは何のポスターですか。
<漁協の人>
 岬サバ、岬アジって知ってるかい。三崎でとれるサバやアジだよね。関サバ、関アジは大分の佐賀関でとれる魚だね。実はどちらも、同じ豊予海峡で取れる魚なんだよ。どちらも一本釣りで釣るから、刺し身で食べられるほど、新鮮でおいしいんだ。でも、関サバ、関アジはとても有名で高く売れる。三崎でとれた岬サバ、岬アジは安い。これはおかしいということで、一生懸命キャンペーンをしているんだよ。そのおかげで少しずつ岬サバ、岬アジも知られるようになって、最近では、同じような値段で売れるようになったんだよ。

<男子6> ふーん、宣伝って大事だね。岬サバ、岬アジは、刺し身がおいしいんですか。
<漁協の人> そうだよ。だから、塩サバとしてはあまりおいしくないっていう人もいるよ。
<男子7> 他に、魚の料理方法を教えてください。
<漁協の人>
 いいよ、鯛は刺し身、焼く、煮る、炊くだね。ハマチは刺し身、煮る、アワビは、刺し身、焼く、煮る。伊勢エビは、焼く、みそ汁、刺し身、ゆでるなど。カレイは焼く、揚げる、刺し身など。サザエは、やっぱり壷焼きが一番だよ。ついでに、三崎の主な魚を説明すると、サバが近海の水面近くを泳ぎ回るもので、背の部分が青緑色。波形の模様をしているよ。鯛は、磯に住むからだが平たく薄紅色のものだ。めでたいとごろあわせで、祝い事につかうよ。アジは、日本各地にいて親しまれているよ。フグは、口が小さくて、敵に会うと、腹に水をためて大きく膨らませる魚だよ。肉はとてもうまいが、はらわたなどに人を殺せるほどの毒があるので、要注意だよ。

<男子6> ありがとうございました。
<ナレーター>
 加工場を後にして、さぁ最後の見学地、種苗センターです。ここではアワビの養殖をしています。そして、おもしろいお話を聞かせていただきました。

<漁協の人> 何か、質問はありませんか。
<男子8> 種苗センターでは、どんなものを育てているのですか。
<漁協の人>
 トラフグ、アワビが主です。ヒラメや鯛もいます。アワビは育てて三pぐらいになったら放流します。だいたい、二十万個ぐらいです。小さい内は、ケイソウを食べています。一p以上になるとクロメという海草を食べます。

<男子8> なるほど。ありがとうございました。
<ナレーター> 男子の中に、アワビのいる水槽で驚くべきものを発見した人がいるようです。
<男子9> あっくもだ。
<男子8> うそー。アッ本当だ。水ぐも?でも海水だよ。
<ナレーター>
 あちらこちらで質問をするうちに、面白いものを発見したり学んだようですよ。
 発見その1。アワビの水槽は、三日に一度掃除を行います。掃除をしてあげないと……。死んじゃうそうです。そんなデリケートな魚。
 発見その2。トラフグは胃が有りません。だから、すぐおなかがすきます。そのため、とにかく食べることしか頭にないので、目の前の物をすぐに食べてしまいます。時々、仲間のしっぽまで、ぱくっと食べてしまうことがあるそうです。だから、トラフグはあほ?
 発見その3。種苗センターの水槽には、食べかすや苔などを食べてくれる、お掃除部隊のお魚たちがいます。しかし、このごろ、アワビのえさを食べるようになり、楽をして食べることを覚えてしまいました。そこで、近々、グッピーととりかえられしまうということ……。楽はしないほうがよかったですね。アワビやトラフグには、すこし失礼な言い方ですが「アワビはデリケート、トラフグはあほ」と覚えるとよいですね。お掃除部隊の魚さんはお疲れ様でした。いや、ご愁傷様でしたでしょうか。

<先生1>  アワビは育てるのに時間がかかるものですね。
<校長先生> 一匹取ってもばれないから、こっそりもって帰ったら?はっはっはっ <女子1> えっ、校長先生、それはまずいでしょ。うーん、でもほしいな。こっそり、とっていきたいな。
<漁協の人> あれ、持って帰るのは、やめて下さいね。泥棒ですよ。
<女子1> あ、はい…。
<ナレーター>
 ちょっとはずかしい思いをした人もいますが、本当にたくさんのアワビがいました。こうして、最後の見学地も終わりました。

<女子1>
 漁協の人達から、ぜひ伝えてほしいということがありました。それは海の被害。そして、私たちにできること。最近、赤潮の発生によって海中の酸素不足がおこり、魚がどんどん減っているそうです。赤潮は、海を汚すことによっておこるのだということでした。私たちにできることは、海岸の掃除。ゴミを捨てないこと。そして、汚れた水を流さないこと。つまり、古い油を流さない。洗剤は適量を使う。米のとぎ汁は植木にかける。などです。海を守り、自然を守ることに気をつけて生活して下さい。
<学級副委員> では、これで一年生の発表を終わります。

発表 平成11年11月10日 二名津中学校 第1学年一同