大だぬき

 昔、昔のことじゃった。名取という村に、若い二人の娘がなかよく暮らしていたそうな。
 ある日のこと、二人の娘が肥料にするための魚を入れた樽(くさらかし樽)を港に取りに行っていたそうな。
 大谷というところにさしかかったとき、そこの小さな川にかかっている石橋の上に、1mほどもある大だぬきが横になっていた。一人の娘が、
 「そこを、どいておくれよ。」
と言ったのですが、どいてくれません。
そこで、もう一人の短気な娘がおいこを大だぬきめがけて投げつけました。
すると、大だぬきは
 「ギャー。」
と、耳がさけるほど大きな声をあげて逃げていきました。
でも、二人の娘達は、また出てきたらいけないと思い、両手に石をしっかりとにぎしめ、歩いて行きました。

 雑木林まできたときです。大だぬきが、山の上でまちぶせをしていたのです。
大だぬきは、山の上から石をころがしてきました。
 二人は
 「これは負けられん。」
と、大きな声でさけび、にぎりしめていた石をおもいっり投げつけました。
すると、その石が大だぬきに頭に当たりました。
大だぬきは「これはたまらん」と言って逃げて行きました。
二人の娘は「やあれ、おとろしかったのう。」と言って、胸をなで下ろしました。
それ以来、大だぬきは現れなくなりました。
    (この話は、太平洋戦争があった頃の話だそうです。)・・・・・おわり

 話をしてくれた人・・・・・谷 千代子(取材当時73歳)
 取材・・・・・・・・・・・・・・・平成2年夏
 編集責任・・・・・・・・・・・ケンボー (5106)