平成八年度入学生事件簿

 僕の中学校の平成八年度入学生には個性的な人が多いので、今年(平成9年)には色々な事件が起きました。では、その事件の中でももっとも鮮烈な印象のある消火器事件について検証してみましょう。 (一部、文章表現に誇張があります。)


平磯のT君 消火器事件      

 我がクラスは、七月の始めごろに三崎町の3つの中学校で国立大洲青年の家に行った。
そして、二日目の夜、その事件は起こったのであった。
僕と複数の友達はトランプを部屋でしていた。すると、なにやらへんな臭いが漂ってきた。どうもそのにおいの源は廊下であると私たちは結論づけた。

 僕は勇気を持って、入り口のドアを開けた。
 ・・・・・・・・・すると・・・・・・・・・

 「ドアを開けるとそこは雪国であった」

 なんと、廊下とそれに続く階段は一面に雪が降ったように真っ白になっていた。
僕をはじめ複数の友達たちもその臭いと光景に、みんなうろたえて、いろいろな憶測が飛びかった。
 ある人が「だれかが花火をしていたのだ」という。
 ある人は「異常気象だ」と叫んだ。
 ある人などは、天井裏に隠されていた覚醒剤が落ちてきたのだ」と馬鹿なことを言っていた。
 しかし、この事件の真相は、やがて廊下の霧が晴れ、目が慣れてくると誰の目にも明らかになった。
 平礒のTくんが隣の部屋の入り口付近の消火器のホースを持って呆然と立っていたのだった。

 そして、しばらくして、やっと僕はその事件の全貌を知った。
そして、その全貌とは・・・

 なんと・・・・・・
 平磯のT君が消火器のホースをかまえ、友達に冗談で「かけるぞ」いっているうちに、突然暴発したそうである。T君によると、その消化器には安全ピンが付いてなかったらしく「ちよっと」押したらガスが出たらしい。でも、子供の心理としてはこのような失敗をした場合、「ちょっと」という言葉をつけて何とか罪を軽くしようとする傾向がある。・・・・多くの人は普段のTくんを知っているので「ほんとかいな・・・」と思ったが、あえてTくんの弁明に対してつっこむ人はいなかった。
 それはなぜかというと、みんなはそろそろ頭が現実に戻りはじめ、これからみんなで一面の雪世界をもとの世界にかえすという壮大な道のりのことを考え出したからである。
ある人が先生に報告した。先生もその後の作業のことを考えてか、その顔には怒りより困惑の表情が見て取れた。
その後の作業については、ご想像にお任せしよう。

その次の日の朝、起床して洗面を終えた僕はふと外をみた。
そこには、大きな消火器を右手に下げ、肩を落として本館の事務室へと向かう(事情説明と謝りに行く)Tくんの後ろ姿があった。
僕はいつも元気なTくんの姿と想像し、複雑な気持ちだった。 「・・・これで、Tくんもおとなしくなってしまうんだろうな」とちょっと悲しい気もした。

 後で聞いた話では、Tくんに反省の様子が強かったからかあまり怒られなかったそうである。

 

<追記 その後のTくん>

 平成10年になって、3年生となったTくんは報道副委員長およびテレビカメラ責任者になった。本校の活動の様子などをビデオにとって編集したり、テレビ放送などの機材の管理をする重要な仕事である。・・・・みなさんの中にはもうすでに何か想像している人がいるんじゃないのですか。・・・。それはともかく、結論から言いましょう。学校の8ミリカメラが壊れて修理不能品として放送室に転がっている。でも、別にTくんがどうのこうのというわけではない。しかしそのカメラを使っていたのはTくんだけであるということをみんなは知っている。

さて、T君からの消火器事件についてメッセージがあるとのことである。

「どうぞ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・「オラ、あのときはまじでびびった。」


<注> ちなみに、左は、新聞オヤジです。これは、内容とは関係ないです。あしからず・・・

平成9年度作品  編集・文責 かつ(5202)